普通なお嬢様の極秘恋愛
「ほらほら、やっぱり目元にも冷やしたタオルが必要かしら?」

クスクス笑う瀬田さんに、しんと静まり返っていた部屋の空気が和んだ。
首を左右に振って、わたしは顔を上げて笑った。

それからわたしは二人に手伝ってもらって、慌てて支度を終え、表に出た。

中堂さんが車の後部座席前で待っていてくれた。
いつ来るか分からないわたしを、暑い中ずっと外て待ってくれていてくれたのかと思うと、優しさが身にしみる。

「……ありがとうござます、中堂さん……!」

「いえ、当然のことをしているまでですから」

にこりと笑ってドアを開けてくれる姿に、いつも通りだ、と安心感がわく。

「瀬田様、お嬢様と森下君に親切にしてくださって、ありがとうございました。
いずれ、お礼に伺いますので……」

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