普通なお嬢様の極秘恋愛
「どうしたの? 翔護」

「旦那様のご厚意は嬉しいんだけど、また高校行けるとは思ってもなくて、夏休みの宿題、一切やってない……。

それより何より、制服も宿題も、どこにやったっけ……?」

苦笑いを浮かべながら首を傾げる翔護に、田中さんが朗らかに笑った。

「ふふっ。森下君はしっかりしていて大人っぽいし、お互いに仕事の話しばっかりしてたから……!

そうやって年相応な態度を見るの、新鮮だわ!
そうよね、いくらしっかりしていても高校1年生だものね、夏休みの宿題もあるわよね!」

田中さんは楽しそうだ。

「うちの娘ね、夏休みの宿題をいつも溜め込んで、休みの終わりかけで慌ててやるのよ?

あ、森下君みたいに働いてて仕方なくってことじゃなくてサボってるからだから、一緒にしたら失礼ね。

森下君は賢いから、今から急いである程度でも、終わらないかしら?」

「う~ん、もう夕方ですしね……。

ある程度終わらせる以前に、まずどこにあるのか探さないと……。
宿題はともかく、制服を見つけないことには学校にも行けません。

あ、普段の荷物は凛のおばぁちゃんの旅館に置きっぱなしだし、仕事の件でも連絡を……」

ぶつぶつと言う翔護に、わたしも不安になった。
また一緒に、しかも堂々と通学出来ると思ったら、制服も宿題もどこにあるかわからないなんて……!
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