抹茶まろやか恋の味
右腕を誰かに強く引っ張られた。
反射的にその方向へ顔を向けた。
浴衣姿で長い髪を下の方で緩く結っている……その姿には見覚えがあった。
「ここなら人も少ないし、花もきれいな、穴場スポットなんだよ」
そう言ってくるりと振り返ったのは、言わずもがな、利香だった。
一瞬、強張った笑顔を見せたが、緊張のせいだったらしく、だんだんと柔らかい微笑みに変わっていった。
「京介……くん、お待たせ」
待たせてしまったのは僕なのに、彼女はそう言って照れくさそうに微笑んだ。
「利香、待たせてごめんね」
「今、利香って……!」
文通をして間もなくから文面上ではお互いを呼び捨てするようになっていた。しかし、実際に再会してみると文面と違って恥ずかしいのか、利香は僕のことを四年前のように『くん』付けで呼んだ。
でも、それがまた懐かしい――。
「あ、あのね……これ!」
利香は照れくさそうに一枚のチラシを僕に渡した。
僕はにっこり笑ってそのチラシを受け取り、ひと通り目を通す。
そして嬉しさに身が弾けそうになるのを堪えながら――。
「ありがとう、利香。これからよろしく」