抹茶まろやか恋の味
校内の出し物でお昼を済ませるからお弁当はいらない――そう母親に断ってしまった手前、何も食べていないというのは恥ずかしい。というより、馬鹿にされる。
優雅に手を振って
「僕の分は要らないから、その分お父さんのお弁当に倍の愛情を入れてあげてよ」
なんてキザったらしく言ってしまったのだ。
これでお昼を抜いて帰ったなんてことがバレたら「それ見たことか!」なんて大笑いされるに違いない。
いくら母親でもそんなに笑われてしまうと三日はヘコむ。だからなにか――なんでも良いから食べられたらいいのだけど。
そんな必死な思いに神が応えてくれた。
偶然目の前のガラス窓に貼られた一枚のチラシを目にしたのだ。
周りに誰も居ないことを確認して――そのチラシをそっと窓から外して、チラシの地図に従って渡り廊下を早足で進んだ。