抹茶まろやか恋の味
「えっと……」
言葉をなくした。
……と同時に、頭のなかが真っ白になったり渦が巻いたり吹雪が舞ったり――とにかくパニックになってしまった。
会えないと思っていた利香さんに、会えてしまった!
それだけを認識するのに軽く数十秒を要した。
「あの、どうかされましたか?」
返答がない僕に、困った様子で彼女は再び尋ねてきた。
「あ、の、その」
何を言えばいい? こういう時クラスのお調子者や人気者なら面白いジョークの一つでも飛ばすのだろうか?
そもそも、こういう時のために『雑学王になろう』的な本を読みあさっていたはずなのに、役に立たないってどういうことだ!
「はい、どうされたのでしょう?」
「あの、ですね……うわあ」
声を少しでも発したことに安堵したのか――緊張してこわばっていた顔がみるみる優しく柔らかい笑みに変わっていく。
(うわあ、可愛い……)
「あの、可愛い、ですね」
「は、はいいっ?」
途端に顔が真っ赤になっていく彼女。
……って、僕はなんてことを言っているんだ!
「あ、あの! その……ゆ、浴衣姿が! 綺麗で可愛いですね! って意味で……って、あっ」
墓穴を掘ってしまった!
彼女はついに茹でたこのような真っ赤な顔をしてうつむいてしまった。
「――あ、ありがとう……ございます」
消え入るような声でお礼を言われるまで、僕があたふたと余計に墓穴を掘ってしまったのは言うまでもない。