雨恋~芸能人の君に恋して~
「でも、私……」
強く抱きしめられた腕の中、返事をしようと口を開いたとき、
「カーット!OK。よかったよ」
監督の声で、開はあっさりと私から離れて、一人、カメラチェックに向かった。
休憩用の椅子に座って、さっきの開の言葉を思い出す。
あれは……MV用の演技?
そう思ってると、カメラチェックを終えた開が隣に座った。
「演技じゃないから」
「え?」
振り向くと、開はさっきと同じ、燃えるような目で私を見ていた。
「俺を見ろよ」
開が言った。
「優紀じゃなく、俺だけを見ろ」