雨恋~芸能人の君に恋して~
その中から二人一組になって芝居をした。
そこで俺と琉宇ちゃんがペアになった。
オーディション前に、一人一人に台本が渡されて、練習時間が与えられた。
一度台本を手に持って、読み合わせした後、
台本なしで練習した。
途中、琉宇ちゃんのセリフが止まった。
眉間にしわを寄せて、必死にセリフを思い出そうとする彼女に、台本を見ないまま次のセリフを教えると、琉宇ちゃんは目を輝かせて、凄いと言って褒めてくれた。
それが嬉しくて、偉そうにも、琉宇ちゃんのセリフの言い回しのアドバイスをすると、
「優紀君は、優しいね」
そう言って笑った。
彼女の無邪気な笑顔にドキッとする。
曇りのない透明な眼差しに見つめられて、体中に電気が流れたみたいに震えた。
今まで、不愛想で、なにを考えてるのかわからない、かわいげのない子だと言われて育った。
こんな無防備な顔を、俺に向ける人なんていなかった。
無邪気に俺に笑いかけて、手放しでほめてくれる琉宇ちゃんに、
体の中が熱くなって、幸せな気持ちになった。