雨恋~芸能人の君に恋して~
「同じオーディションを受けるなら、ライバルなのに。優紀君、ありがとう」
律儀に俺のアドバイスを、台本に書き込む琉宇ちゃん。
ぶつぶつと、何度も口の中でセリフを練習する彼女から目が離せなくて、
「一緒に合格しようね」
心から、そう願った。
「相澤琉宇の読み合わせの相手は、俺にさせてください!」
オーディション当日、ミーティングのために会議室に集まった審査員たちに申し出た。
本来なら、読み合わせの相手は別の人がする予定だったけど、例えオーディションでも、琉宇ちゃんの相手は、俺以外の男にさせたくなかった。
琉宇ちゃんの相手役だけが俺なのは不公平だからと、急きょ、最終審査に残った女の子たち全員の相手をすることになった。
最終審査に残ったファイナリストは8人。
君ならできる。
8人全員がステージの上に立つ。
その中でも、ひときわ強い輝きを放つ彼女を見つめる。
君ならできる。
希望に満ちた目をして、前を向く彼女が眩しくて、目を細める。
真剣な彼女の眼差しに、鼓動が早まる。吸い込まれるみたいに、彼女から目が離せない。
琉宇ちゃん、自分を信じて。
俺も、君を信じてるから。
ステージ下に設けられたゲスト席から、彼女を見上げた。