雨恋~芸能人の君に恋して~
懐かしい記憶がよみがえる。
何もかもが、初めての体験だった。
映画やドラマに出てるような、有名な子役ばかりの中、私なんかが残っていいの?って不安だった。
しかも最終審査で読み合わせの相手だった優紀君は、その中で、誰よりも綺麗で、誰よりも演技が上手だった。
出演実績なんてほとんどない、素人同然の私は、優紀君に「下手くそ」って怒られるんじゃないかって怯えてた。
けど優紀君は、私がセリフを忘れても、つっかえても。文句ひとつ言わないで、何度も練習に付き合ってくれた。
優紀君に迷惑をかけないように。
何よりも、優紀君と同じドラマに出られるように。
とにかく夢中で練習した。
あの頃の、がむしゃらに真っすぐだった自分を思い出す。
一度目を閉じ、台本に書かれた女の子を、頭の中に思い浮かべる。
それこそ髪の毛1本まで鮮明に。
目を開き、最初のセリフを声に乗せる。
優紀君は、嬉しそうに目を細めて、そんな私を受け止めた。