雨恋~芸能人の君に恋して~
「ストップ。琉宇。ちょっといいかな?」
また監督にダメ出しをされた。
すると、
「えー?またですか?」
うんざりしたように、もえなちゃんが言った。
一気に、その場の空気が悪くなる。
スタッフや、共演者たちも、もえなちゃんと同じことを考えていたんだろう。
ざわめき始めた。
それに気づいた助監督が、私以外の全員に休憩を伝えた。
迷惑をかけてしまってる。
落ち込む私の肩を、優紀君が優しく叩いた。
「監督は、気に入った子にはとことん厳しい人なんだ。負けないで」
優紀君の手が触れた場所から、温かい熱が伝わって。
絶対にくじけないって、勇気がわいた。
「最初の頃は、俺も監督に、泣きそうなほど絞られたよ」
当時を思い出したのか、うんざりしたように溜息を吐く優紀君が可笑しくて、強張っていた頬の筋肉が緩む。
「泣いたの?」
「ちょっとだけ」
そう答えた優紀君に、思わず声を出して笑った。