雨恋~芸能人の君に恋して~



「ストップ。琉宇。ちょっといいかな?」



また監督にダメ出しをされた。



すると、



「えー?またですか?」



うんざりしたように、もえなちゃんが言った。



一気に、その場の空気が悪くなる。



スタッフや、共演者たちも、もえなちゃんと同じことを考えていたんだろう。



ざわめき始めた。



それに気づいた助監督が、私以外の全員に休憩を伝えた。






迷惑をかけてしまってる。



落ち込む私の肩を、優紀君が優しく叩いた。



「監督は、気に入った子にはとことん厳しい人なんだ。負けないで」



優紀君の手が触れた場所から、温かい熱が伝わって。



絶対にくじけないって、勇気がわいた。



「最初の頃は、俺も監督に、泣きそうなほど絞られたよ」



当時を思い出したのか、うんざりしたように溜息を吐く優紀君が可笑しくて、強張っていた頬の筋肉が緩む。



「泣いたの?」



「ちょっとだけ」



そう答えた優紀君に、思わず声を出して笑った。





< 50 / 94 >

この作品をシェア

pagetop