雨恋~芸能人の君に恋して~
「優紀君!ねぇ、どうしたの?」
もしかしてと思って、優紀君のおでこに私のおでこをくっつける。
「熱だ!」
優紀君のおでこは凄く熱くて、とにかくどこかに避難しなきゃと、辺りを見回す。
どこが道で、どこが森林か分からない、真っ白な世界。
ここで、また雪崩に巻き込まれたら、2人とも死んでしまうかもしれない。
そう考えて、ぞっとした。
「優紀君。撮影現場まで戻ろう?」
あそこには控室代わりに使っていた民家がある。
古くて、もう誰も住んでいない家だけど、ここにいるよりは安全だ。
そう考えて、優紀君に声をかけるけど、もう立つのすら苦しそうで、
「私につかまって!」
優紀君の肩を抱いて、来た道を戻る。
一見女の子みたいに華奢なのに、それでも優紀君は男の子で、私のひ弱な腕力じゃ上手く支えられない。
それでも、こんなところで立ち止まるわけにはいかないと、両足を踏ん張って、前へ、前へと歩いた。