雨恋~芸能人の君に恋して~



仕事を終えて、一人暮らしするマンションに帰ると、撮りためていたドラマを見た。



画面の中、透き通った笑顔を浮かべる優紀君。



その唇が動くたび、あの日、北海道で交わしたキスを思い出して赤くなる。



ドラマ撮影後、番宣のために一緒に番組に出たり、インタビューを受けたけど、



あの日以来、2人きりで会う時間はない。



唇に指を這わせると、思い出す。



あの日の、優紀君の熱い唇の感触を。



「会いたいな」



仕事中は考えないようにしてるけど、こうして一人きり。部屋にいると、寂しくて心が凍えそうになる。



「会いたいよ、優紀君」



本人に伝えたいけど、言えない想い。



きっと優紀君は、私が会いたいって言えば、どんなに疲れてても。



遠く離れていても。



一瞬しか会えなくても。



無理して会いに来てくれるだろう。



けど、そのことが分かるから、なおさら我儘を言えなかった。



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