雨恋~芸能人の君に恋して~
一生懸命に、あの日の状況を説明する琉宇。
「信じて!」
悲痛な彼女の言葉を信じたい。
けど信じきれない自分がいた。
『ごめんね。優紀』
6年前の雨の日。
母が電話で残した言葉が、今も俺の心を蝕んでいる。
母は、あの電話を最後に、ビルから飛び降りた。
俺たちを捨てて消えてしまった、父の後を追うように。
いつか琉宇も、俺より大切な人ができて、母と同じように俺の前からいなくなるんじゃないかって。
怖くてたまらなかった。
スマホを持つ手が震える。
心が6年前の、あの雨の日に戻ったみたいに、寒くて震えが止まらなかった。
心は立ち直れないほど傷ついていた。
それでも仕事を休むわけにはいかなくて、淡々と与えられたスケジュールをこなす。
まるで心をどこかに忘れてしまったみたいに、みんなの前で平気な顔をして笑う自分がいた。