雨恋~芸能人の君に恋して~
琉宇に会わないまま、ヨーロッパへと旅立つ日が来た。
タクシーで飛行場に向かっている途中に、着信があった。
琉宇からか?
期待して胸がざわついたけど、相手は開だった。
「なんだよ」
『ずいぶん不機嫌な声だな』
6年前のドラマ以来、開とは仲がいい。
性格が全然違うからか、一緒にいて楽しいと思える数少ない友達だ。
けど今は、こいつの声なんか聞きたくない。
『何いじけてんだ?相変わらず、ガキだな』
同い年の開は、からかうようにそう言った。
「誰のせいだと思ってんだ?」
『誰の?優紀のせいだろ』
悪びれもせず答える開に、イラッとする。
琉宇との関係が悪化したのが俺の責任だなんて、本当は気づいてる。
俺が一言、「あんなデマ、気にするな。俺は琉宇を信じてる」って言えば終わる話で、
けど、
「お前にだけは言われたくないね。俺の琉宇に触りやがって!」
琉宇のことが好きすぎて、
どうしたらいいか分からない苛立ちを、開にぶつける。
『このままヨーロッパに行っていいのか?』
そんな俺に、開はいつになく真面目な声で言った。
「じゃあ、どうすればいいんだよ!」
『そんなの自分で考えろ』
そう言うと、開は電話を切った。