瞳 短編小説
今日は時計がならなかった。
どうやら休みらしい。
いつもより2時間遅く彼は起きた。
あくびをしながらまた私を見て「おはよう」と言った。
彼が私に話しかける度心がいたんだ。
聞こえてる。聞こえてるのにどうしてこの口は開かないのだろうか。
彼はそんな私にそっと近づき言った。
「ねえ、君はなぜそうしてるの?なぜ動かないの?なぜ無視するの?」
まるで心をえぐられたかのような感覚になった。
彼は私をそっと持ち上げて彼のひざに私を座らせた。
「君は何を考えてるの?」
彼の顔を見たら彼は外を見て辛そうな顔をしていた。
「君は生きてる。」
彼は外を見たままそういった
「君は動ける。君は話せる。君は…自由だよ。」
彼の言葉の意味がよくわからなかった。
「君は信じないだろう。君は人形なんかじゃない。君は君だ。目を覚まして。実はもう目を覚ましてるんだろ。気づいてるよ。君の少しずつ変わる表情。僕にはわかる。」
彼の顔ははっきりとは見えなかったが泣いているのはわかった。
その夜彼は私を抱きしめたまま深い眠りについた。
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