また会いたくなっちゃったんだろ?



雨の音が絶え間なく聞こえる。

「あの、私こないだ忘れ物しちゃったんです。」
「ん?何を?」
「あの、1回でいいので名前を呼んでもらえませんか?」
「え?…ち、はや?」
「(きゃぁー!)ありがとうございます!」

「ちはや、綺麗な名前だな、たしかアニメにも『ちはや』っているよな。」
「ただ俺、不器用だから呼んでると仕事場でも出ちゃうんだよな。」

「いいです、いいんです。今ので十分です。」
「初めさ、ちはやって言う女の人がウチの部署に来るっていうんで、どんな人かなって気になってた。」
「名前のイメージ損ねてないでしょうか?」
「大丈夫、名前も姿も美しいよ…」


嬉しい…嬉しいです、先輩。

「おいで、ちはや。」

先輩の胸に抱きすくめられる。
外の明かりを気にして、シートを倒した先輩に、今見つめられてる。

でも…
キスはあれが特別の最後のキスだった…よね。
ち、違うの?
なぜ…?
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