さよならの準備
さよならの準備
離れたくないから、
教室の中と外では気温差が激しいんだろう、わずかに窓が白く染まっていて景色が見えない。
外はまるで幻のようにぼやけているのに、きっと幻が似合うのはやけにあたたかいこの教室の方。
つかの間のぬくもりはとても儚い。
頬杖をついたままため息を落とす。
涙のように形を持っていたならきっとぽとん、と机の上を転がったに違いない。
わずかにざわつきつつも終礼が終わった。
みんなして急くように席を立つ。
あたしもそれはクラスメートと変わらず、参考書や過去問の入った、重いリュックを背負った。
ぐるりと首にマフラーを巻けば、頬に触れる程度の長さのショートヘアがわずかにマフラーに押さえつけられる。
ふるふると首を振り、こげ茶の髪を落ち着かせて彼の前に立つ。
「紡、帰ろう」
綺麗な黒髪の、割と可愛い顔立ちをしている、明口 紡(あきぐち つむぐ)。
あたし、木原 梨沙(きはら りさ)の彼氏が自身の大きな瞳にあたしを映す。
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