さよならの準備
「あの、ごめんね。
いつもはるくんが明口くんといるから、木原さんは一緒にいられないよね」
申し訳なさそうに西田さんが表情を暗くする。
本当なら、気にしてないよと言ってあげるべきなのに……言えない。
はるが悪いわけじゃないとわかっている。
あたしだってはるには勉強を教わって、何度も助けられてきた。
それでも、教えるという名目であたしが紡のそばにいられたなら、なんて思ってしまうんだ。
「西田さんこそ、平気?
紡のせいでなかなか話せていないんじゃない?」
誤魔化すようにあげた話題だったけど、本当にそのとおり。
紡のそばにはるがいることは、必然的に西田さんたちの距離を広げることになる。
はるの方が辛いような気もするけど、西田さんだって辛いんじゃないか。
「大丈夫。はるくんは人気者だから、いつでも隣にいれるわけじゃないもん。
わたしは慣れてるよ」
「そう?」
「うん。それに目指す大学も同じだから、もうしばらくの辛抱なんだ」
そう言って西田さんはふにゃりと柔らかく笑う。