さよならの準備
「だからね、木原さんたちも話し合った方がいいと思うの。
わたしたちは進路を同じにすることだったけど、ふたりは違うんだよね?」
「うん」
「じゃあわたしたちよりずっと必要だよ」
うん、ともう1度かすれた声で返事をしたけど、西田さんに届いたんだろうか。
わかってる。
あたしだって……わかってる。
きっとあたしたちに足りないものは会話だ。
だけどそんな時間はふたりの間に用意されない。
そんなことより紡は勉強することを選ぶだろう。
そしてあたしも。
互いの気持ちを確認し合うことで、どうなるのかこわいと思っているから避けてしまう。
逃げてもどうにもならないと知っているけど、それでもいやなんだ。
あたしはとても弱くなった。
ひとりになる恐怖を、失う苦しさを、知ってしまった。
西田さんを強くしたのがはるなら、あたしを弱くしたのは紡だ。
西田さんと違ってあたしの恋は、きっといいものじゃなかった。
ツンツンしてるくせにあたしのことを気にかけて、みんなと繋げてくれて、たまに笑いかけて、あんなに優しくして。
あたしの中で君をこんなに大きなものにして。
そんなの……大切だと思うに決まってる。