さよならの準備
君と離れることを平気だなんて思えない。
別に大丈夫だし、なんて強がることもできない。
だって、いやだ。
……いやだよ。
受験なんてしたくない。
高校を、君と過ごす日々を卒業したくない。
紡の隣はあまりにも、心地よかったから。
熱が出るような、のぼせるような幸せはいらない。
ただただぬるい、柔らかな日常が恋しい。
それさえあればよかったのに、どうして贅沢なものになってしまったんだろう。
ため息を落とす。
西田さんの視線が向けられているから、紡の方に視線をやることさえ意識してしまって難しい。
ああ、そうだ。
もう、見つめることもできないんだ。
だからやっぱり、あたしは紡とは……別れたい。
自然と離れていくような未来がくる前に、君とは別れた方がいいと思う。
だけど、紡があたし以外の誰かと付き合うことなんて考えられない。
耐えられない。
そんな中途半端でずるいあたしだから、君はどこかへ行ってしまうの?
気軽に尋ねることができないこの距離がほっとして、切なくて。
あたしはぎゅっと目を閉じた。