さよならの準備
1年生で自然と集まり、日の当たらない場所で座りこんでいた時。
「木原」
そう、あたしを呼んだのは、部員の中で1番親しくしているアッキー。
普段より低い声で、なんだか不機嫌らしい。
「なに」
「また怪我してる」
「ああ……」
どうやらあたしは手の内……弓の握り方がちゃんとできていないらしい。
頬に弦が当たり、傷をつくることが多い。
その怪我の手当てをよくしてくれるのが、アッキー。
口調は冷たいくせに優しい。
「変なくせついてんじゃない?
女が顔ばっか怪我作るってどうなの?」
「……」
容赦ないけど多分……、優しい。
あたしの頬にあつい指先が触れる。
傷口に薬を塗って、絆創膏を貼ってもらう時にわずかに触れただけなのに、じんと痺れるよう。
思わずどきどきとしつつも、それを表情に出さないように必死で冷静を装っていたのに、
「なぁ、木原とアッキーって付き合ってんの?」
そんなことを部員に尋ねられた。