さよならの準備
「ああ、うん」
こくりと頷いて紡も立ち上がる。
寒がりなこいつはあっという間に顔の半分をマフラーで隠してしまった。
あたしもそんなに高くないけど、紡も男子にしては背が低い。
わずかに視線を上げるだけで彼の顔を見つめることができる。
身長は変わらずとも、あたしよりずっと長いまつげを見つめていると、用意が終わったらしい。
廊下へと出て、ふるりと肩を震わせた。
歩くたびに一部がチェックになっている、紺のボックススカートが肌を撫でる。
指定じゃない、青緑のカーディガンの袖を伸ばして冷たい空気から手を隠した。
ちなみに隣に立つ紡はコートを着ているから揃いのチェックのシャツも、ライトグレーのカーディガンも、紺のブレザーも見えない。
紺に近いグレーのスラックスが覗いてるだけ。
これだけ着こんでいるのに、元が細いから着ぶくれしているようには見えない。
羨ましいやつだ。