さよならの準備
〝明日〟はいつまでもこないから、
あっという間にお正月は過ぎ、新学期がはじまってから1週間もの時間が流れた。
もう入試まであと1ヶ月を切ったところ。
みんな休み前よりずっと熱心に勉強していて、大詰めの時期。
そうわかっていても、放課後に紡とふたり肩を並べて歩いていれば、このままどこかへ行けたらいいのになんて考えてしまう。
なんて不真面目な受験生なんだろう。
「弓道部に顔出したいね」
「そんなことばっか言ってないで勉強しなよ」
外気にさらされ、寒さを痛みのように感じている耳に紡の言葉が届く。
正しく厳しいそれに、歯が唇に食いこむ。
「……わかってる」
そう? と返される声が冷たく思えるのは、あたしの勘違いだったらいい。
アスファルトを睨みつけながら紡のあとを追っていると、ぴたりと彼の足が止まる。
今日も塾だから、と言われて……ああそうだね、一緒にいられるのはここまでだ。