さよならの準備
通学路を肩を並べて歩く。
こうやってふたりで帰るのは、付き合う前からの習慣。
あたしたちは、今年の6月に引退するまで弓道部だった。
1年生の頃、ツンケンしていてちょっと浮いていたあたしは物理的に不器用で、よく顔や左手に弦が当たり痣なんかの怪我を作っていた。
その手当をよくしてくれていたのが、態度は悪いくせになんだかんだで優しい……ツンデレの紡。
彼とつるむようになると部活内に友だちもできて、すごく幸せな日々だった。
だけど、今。
あたしたちのリュックの中には弓道に関するものは入っていない。
弓なんかは大会前じゃない時は持って帰っていなかったけど、ゆがけという弓を引くための道具なんかは常にあったのに。
それすらもない。
あたしたち3年生は受験生。
それも12月となれば追いこみの時期。
弓道部に遊びに行く暇があったら勉強をしないといけない。
それでも、前みたいにみんなと集まりたい。
遊びに行けなくてもおしゃべりしたいし、弓を引きたい。