さよならの準備




通学路を肩を並べて歩く。

こうやってふたりで帰るのは、付き合う前からの習慣。



あたしたちは、今年の6月に引退するまで弓道部だった。



1年生の頃、ツンケンしていてちょっと浮いていたあたしは物理的に不器用で、よく顔や左手に弦が当たり痣なんかの怪我を作っていた。

その手当をよくしてくれていたのが、態度は悪いくせになんだかんだで優しい……ツンデレの紡。



彼とつるむようになると部活内に友だちもできて、すごく幸せな日々だった。



だけど、今。

あたしたちのリュックの中には弓道に関するものは入っていない。



弓なんかは大会前じゃない時は持って帰っていなかったけど、ゆがけという弓を引くための道具なんかは常にあったのに。

それすらもない。



あたしたち3年生は受験生。

それも12月となれば追いこみの時期。

弓道部に遊びに行く暇があったら勉強をしないといけない。



それでも、前みたいにみんなと集まりたい。

遊びに行けなくてもおしゃべりしたいし、弓を引きたい。






< 3 / 41 >

この作品をシェア

pagetop