さよならの準備
悩みつつも、ぽつぽつと問いかけた。
「ねぇ、紡。
本当になんでも言っていいの?」
あたしは、建前じゃない気持ちを伝えることは得意じゃないよ。
強がってばかりのあたしの本当を引き出して、困るかもしれないよ。
そう思いながらもどうぞ、と促されておそるおそる口にする。
「じゃあ……、今日は塾に行かないで」
「うん」
「弓道部に顔を出すんじゃなくて、よく寄り道してたコンビニに行きたい」
「いいよ」
「そこであんまん食べたい。
紡の好きな肉まんじゃなくて、あんまんだよ」
「わかった」
なんでも受け入れられることにどきどきする。
彼の様子に勢いづき、あとね、とさらに願いを紡ぐ。
これは大本命、なによりの望み。
「これからもずっと、そばにいて」
ささやくように、小さく声に乗せた。
ぴたりと足をとめて、彼があたしの顔を覗きこむ。
ふわりと笑って、慈しむようにあたしの後頭部をくしゃりと撫でた。
「もちろん」
優しい言葉を吐き出す紡の唇が、想いを乗せるように強く、あたしのものに重なった。