さよならの準備
付き合っているんだし、別におかしなことじゃない。
久しぶりだったし、正直なところ嬉しかった。
だけど問題なのは、その場所が通学路だったということ。
ただの通行人のほかに同じ制服を着た人たちが何人かいた。
そんな中のキスは、一体どれだけの人に目撃されてしまったのか。
考えただけでもう、ありえない。
そう思って、久しぶりにツンケンと言葉を投げつけあい、そのままお開き。
早く塾に行きなよ、なんて駅にさっさと戻ったんだ。
それなのに今日、わざわざ話題にあげるなんて……。
「もう大丈夫っ」
きゅっと唇を噛み締める。
恥ずかしくて顔をうつむかせると、その様子に紡はかすかに笑みを孕んだ声をもらす。
「笑うんじゃない!」
「ん」
もう、と怒りつつも、心にもやはかかっていない。
どこかで楽しいと思っている。
本当に久しぶりの感覚に、本当はとてもどきどきした。