さよならの準備
「今日なら塾の授業遅いし、まだ時間あるけど。
本当にいいの?」
まだからかうのか、と思いきっと睨みつけるも……ああ、違う。
今の紡は本気で、ただあたしを気遣ってくれている。
素直になれないあたしが、本当の気持ちを言いやすいようにと。
「本当に、もう大丈夫」
気にかけてくれてありがとう、とコンビニの前を通り過ぎた。
だって今はさよならの準備をする時じゃない。
昨日までのあたしみたいにさみしさを誤魔化して隠すのも、別れの覚悟を決めるのも、おかしいんだ。
卒業したらあたしたちは違う進路へと進む。
毎日会えなくなるし、すれ違ってしまうことが増えるんだろうと思う。
これからできる距離は、悲しいし苦しい。
どうしようもなく泣きたい日も、不安に押しつぶされそうになる日もある。
それでも、ふたりの未来をつくるために。
今はそばにいられないことを我慢して、言葉を、心を尽くすこと。
これがあたしたちに必要だったんだ。
そう、君が教えてくれたから。