さよならの準備
否定したけど、本当は紡の言うとおり。
でも、そうじゃない。
別れたいと思うけど、違う。
君がいやになったわけじゃないし、嫌いになんてなれるはずがない。
今があまりにも苦しいから。
ただ、それだけだ。
「っ、」
言えるはずもない言葉は喉の奥で詰まる。
そのまま石がことりと落ちるように、あたしは胸に違和感を抱いたまま。
だって今のあたしたち、きっと幸せじゃない。
アッキーなんて呼んでいた、あの頃の方がずっとずっと、満たされていた。
君のそばにいられない彼女ほど苦しいものはないんだ。
好きならそばにいたいし、いるべきだと思う。
だけど受験生だからいられない。
しかもそれは、ただ耐えていれば元に戻れるわけじゃない。
あたしと紡の志望校は違う。
重ならない進路、未来。
これからもっと遠くなることがわかっているのに……このままなんて、無理だ。
募る切なさは、もう決まってしまって覆すことのできない決別が原因だ。
君の受験を邪魔したいわけじゃない。
頑張ってる君に落ちてしまえとは言えない。
それならあたしに残された道は、ひとつだけだ。