さよならの準備
許せないから、
カチカチカチ。
シャーペンのノック部分を何度も押す。
いつまで経っても出てこないシャー芯に舌打ちを打ちながら中を覗くと、1本も芯が入っていない。
そりゃ出てこないわけだ、とシャーペンを机に放り投げた。
授業を受けつつ、並行して解いていた過去問。
きりのいいところまでやってしまおうと休み時間になっても解いていたけど、集中が途切れてしまった。
肺の奥から吐き出したような重たい息。
んー、と声を出しながら伸びをした。
疲れた目をぐっと押さえて体を机とは違う方……紡の席へと向ける。
そこには、1年の時からずっと同じクラスの榎本 晴也(えのもと はるや)……通称、はるの姿。
クラスの人気者で、勉強ができるからよくみんなに教えている。
推薦で大学が決まってるから遠慮せず訊けるんだ。
丁寧な教え方はわかりやすく、あたしも1年生の頃からお世話になっている。