我那覇くんの恋と青春物語~水谷百合編~
「えっ」


「・・・うそ」


扉を開けると、ステージ前には彼女が立っていた。

彼女は驚いた表情をしているが、こちらもまさかいるとは思わなかったので驚いた。



しばらくそのまま立ち尽くしていたが、お互いに小さく笑い、彼女のほうへと歩み寄った。


「早いね、水谷さん」


「早く着いて開いていなかったから、警備員さんに頼んで開けてもらっちゃった」


「だからこんな時間でも開いてたんだね」


もう一度笑い、ステージに背をつける。



あんなことを思っていただけに、こうして目の前に彼女本人がいると、いつも通りの自分でいられているのか不安になる。


「私ね・・・今、あなたのこと思い出してたの。ここで出会って、たくさんの思い出ができた・・・あなたに会えなかったら、私・・・駄目だった。この学校も辞めていた」


「・・・」


「あなたは困っている、辛そうな私をほっとけなかっただけかもしれないけど・・・」


唇をきゅっと結び、彼女がこちらを向いた。
< 27 / 34 >

この作品をシェア

pagetop