対応は激甘でお願いします
「どうだった?自治会の人たち」
「……災害避難に関する名称変更ができていないと、怒られました」


 大崎さんの隣にあるデスクに鞄を下ろしながら、げっそりと呟く。

 この市役所で働き始めて早2か月。

 住民のひとたちの役に立ちたい。

 そう採用試験で言った言葉は嘘ではないけど、そんなキラキラとした志は半分ほど折れてしまっている。

 今日だって地域の自治会の定例会に参加して、質問攻めにあって、怒られて、怒られて……。

 庁内で働いていたって大変な住民さんがやって来ると、どっぷり疲れてしまう。


 私これでも頑張ってるんです!

 なんて言葉は職員になった以上、零すこともできない。


 そりゃもちろん、できてないことは指摘してもらわないといけない。

 でも、もう少し私たちが工夫したり努力しているところにも目を向けて欲しい。

 ……とか、最近は思うわけです。

 
 新人すぎて職場の人にも言えないけど。


「ああ、それ僕もさっき気が付いてね。資料を作ったのは、えーっと、西条さんだっけ」
「……そうです」
「まあ、あの人も最近ご家族のことで大変みたいだからなぁ。今度からは念入りに、自分でも資料チェックした方がいいね」
「はい……」


 自分の知識不足も相まっていたたまれない。

 そう心の中でしょぼくれながら、今日持参したファイルを棚に仕舞って、デスクの上を片づける。
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