恋の悪あがき〜甘い香りに誘われてⅡ
*大樹side*

「松田君だったのか…うちの可愛い佐伯ちゃんを泣かせてるのは」

藤枝室長が、悠里に向けていた笑顔を引っ込め、怖い顔で俺を睨む。

「なんですか。泣かせてるって…」

まあ、座れとベンチに座るから、隣に腰掛ける。

「井川のことは、誤解なんだよな?」

「はい」

「ヤバイよ、佐伯ちゃんは。彼女…海外支店への異動を希望してる」

「海外支店?……どうして…」

「たぶん、ここ本社には、きみと井川がいるからだろうな。仲睦まじい二人を見たくないんだろう。

ただ、それなら、他県へ行けばいい。なのに海外だ。何かあるな」
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