恋の悪あがき〜甘い香りに誘われてⅡ
"何かある"

藤枝室長の言葉を、心の中で反芻する。

悠里…なぜ、俺から逃げるんだ?

「……」

考え込んだ俺に、藤枝室長が続ける。

「仕事は大切だ。きみくらいの年頃は、重圧もあって大変だが、毎日が充実してるだろう?

彼女はモテる。あの容姿だ。取引先からの問い合わせも多くてね。ぼんやりしてると、横から盗られるぞ?」

「……っ」

「あり得るだろう?合コンで、いい雰囲気になった男もいるし。

そばにいて欲しいと思う人に、触れられないのはキツいよ」

「……」

ポンと俺の肩に手を乗せ、藤枝室長は温室の方へ歩いて行った。







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