恋の悪あがき〜甘い香りに誘われてⅡ
大樹の車で、あの丘に来た。夜にしか来たことなかったけど、こうして昼間に見ても、気持ちがすーーっと落ち着く。

「大樹…香港だったんじゃ…」

菊水亭から脱出できたことが信じられず、フワフワと夢の中にいる気分だ。

「死ぬ気で仕事して、解決してきた」

これから、どうするんだろ…

「悠里さあ、スマホはどうした?俺、何度も電話したけど?」

「あっ……家に置いてきた」

ハアァ…

盛大にため息を吐いた大樹が、

「スマホは携帯する道具だ。社会人として基礎のキだ」

「……っ」

「そうか…スマホ、見てないんだな。説明する」

と、こちらに向き直る。
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