才川夫妻の恋愛事情
鼓膜の中をくすぐるように囁くそのかんじにいろんなことを思い出してしまう。三年目のこのときもう既に、信じられないほど頻度の低いセックスに縛られていた。二ヵ月前や三ヵ月前のそれなんて忘れてしまいそうなものなのに。そのたった一回が良すぎて何度でも思い出す。きつく押さえつける腕と慈しむような唇。容赦ない動きと甘やかす手のひら。欲情する瞳と、その後段々丸く優しくなる瞳。



なんて呪いをかけてくれたんだろう、と。



「なんで?」



アダルトな雰囲気の中で繰り返す子どものような「なんで」に、そう長く持たなかった。私は半ばキレながら「好きだから以外ありますか!?」と叫んでいた。



「やっぱり楽しそうだ」と彼は笑った。



そして言ったのだ。

腕の中に私をおさめながら彼は、よくない笑い方で。



「いいこと思いついたんだけど」








……それ絶対いいことじゃないですよね?






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