才川夫妻の恋愛事情
「そう言えば花村はどうした?」
片手と口で器用にお箸を割ると、駒田さんはそう問いかけてどんぶりにたっぶり入った肉うどんをすすった。
とっても美味しそうだけど深夜にそれは……。でも炭水化物という時点でもう……。なんて、ぐるぐる考えながら私は素うどんをすする。
「調子悪そうだったんで先に帰しました」
そう答えて才川さんは、隣で天ぷらうどんをすすった。とても姿勢よく、美しい所作で天ぷらうどんの小サイズを。……才川さんは小なのに。私は特に迷わず並を頼んだ自分を恨んだ。お腹の中に炭水化物と罪悪感が溜まる。
確かに彼は、Yシャツの上から見る限り贅肉とか脂肪とかとは無縁そうだ。
思わず食べる手を止めて体を凝視してしまった。私の視線に気付いた才川さんが不思議そうにこちらを見る。
あ。
ちがうちがう。
私の興味は才川夫妻。花村さんがなんだって?
「まぁ、お前らここ最近ずっと遅いらしいしなぁ……。花村のあんな細っこい身体ではもたんわな」
「いや、体力ありますよ花村は。同期を褒めるのもなんですけど根性もあるし。今回は僕が無理をさせてしまっただけで」
「足腰立たなくなるくらい?」
「はは。明け方まで抱き続けたらそりゃ仕事キツくなりますよね。反省してます」
「若いっていいなぁー」
「……駒田さんも才川さんも、私には下ネタ聞かせても大丈夫って思ってるでしょ」
「こんくらい何が下ネタだ」