才川夫妻の恋愛事情
びっくりした。途中まで〝仕事で無理させてしまった〟って話だったはずなのにすごくナチュラルに下ネタに切り替わっててびっくりした! 才川さんの間髪入れない切り返しにもびっくりした。
〝言われた本人が不快に思ったらセクハラ〟って習ったのを駒田さんは覚えていそうにない。セクハラ研修意味ない。私は黙って素うどんをすすることにした。
「冗談はさておき、才川」
「はい」
「お前、そろそろちゃんとしろよ、花村とのことは」
……お?
「三十路前の女つかまえていつまでもあんな茶番やるもんじゃねぇぞ」
「わかってますよ」
あれ。
もしかして今、すごく核心に触れる会話を。
「その様子だとあの噂もデタラメなんだろ」
「噂?」
「タバコ部屋で噂んなってたぞ。深夜の会議室でお前と花村がヤってるって」
……また下ネタ!
最低です! と抗議したいのをぐっと堪えてうどんのダシを飲む。
水を差したくなかった。才川さんが答える一言一句を、ちゃんと聴いておきたかった。
「……はは」
彼は否定も肯定もしなかった。
駒田さんはそれ以上追及せずに、また別の質問をする。
「本気で落とす気あんのか?」
才川さんは、今度はにこりと笑って答えた。
「式の二次会の、乾杯の挨拶は駒田さんにお願いしますね」
おぉ任せとけ、と駒田さんが機嫌よく笑ってこの話題は終わった。