才川夫妻の恋愛事情
「……」
衣擦れの音で目が覚めた。
夜七時過ぎには先に帰宅して仮眠をとっていたから、才川くんが帰ってくる頃には起きているつもりだった。それが、電気を点けたままの寝室で布団も被らずにうたた寝をしてしまっていたらしい。
一体いま何時なんだろう。
寝室に入ってきた才川くんは着替えを取りにきたようで、物音をたてないようにそろりとクローゼットを開けていた。私は起き上がってお帰りなさいを言おうとしたけれど、少し思いとどまって狸寝入りをする。
「……」
クローゼットを閉じる気配。これからシャワーを浴びるつもりだろうか。睡眠不足だろうしもう、朝にしちゃえばいいのに。彼はお風呂に入らずベッドに入るのが嫌みたいで、そういうところ潔癖だよなーなんて思いながら、私はまだ狸寝入りを続ける。
すると、ギシッとベッドが軋んで。
期待に胸が高鳴った。