才川夫妻の恋愛事情



「……ん? なに?」

「みつき、野波さんに何か言った?」

「え?」



なんでここで野波さん? と疑問に思いながらも心当たりを探す。と言っても、野波さんと最近じっくり話したのはこの間の帰り際くらいだ。



実は一つだけ、あの事かなぁと思う会話があった。



でもそれはちょっと、私の口からは言いにくい。



「何かって、例えばどんな?」

「……いや、まぁいいや。おやすみ」

「うん? ……おやすみなさい」



電気が消されてパタリとドアが閉まる。

濁しちゃったなぁ。でもこれはちょっと言えない。
もしかしたら会社でなら、才川くんと花村さんの関係性の中で軽く言葉にして言えるのかな。でもそんな風にして伝えたくはなかった。





瞼が重くなる。












今日も一人のベッドで。

囁かれた左耳の熱に悩まされながら、眠る。













*




< 121 / 319 >

この作品をシェア

pagetop