才川夫妻の恋愛事情








目覚めて、木曜日。

頭の中に今日の才川くんのスケジュールを思い浮かべる。

今日の午前中は製薬会社の冬のキャンペーン展開の打ち合わせ。往訪だからこれで午前中は丸々それに費やされて終わるはずだ。

午後一は来客。テレビ局の営業さんだからそんなに時間はかからないだろう。

その後は四時から部会。部長から事例発表を命じられていたけれど、それは昨日のうちに資料を仕上げているし問題ないはず。

あと六時に打ち合わせがもう一本。新製品開発プロジェクトの報告会があったはずだ。これは主任という立場で報告を受けるだけなはずだけど……説得資料の作業はいつ?

現場で動く彼を、主任という役職が邪魔しているようでなんだかなぁ、と思ってしまう。



明日の役員会議であげてもらうためには今晩中に資料を先方に送っておかなければならない。今晩中とは言ってもきっと、このスケジュールでは常識的な時間に送ることはできないだろう。深夜残業がはなから見えていた。



「……大丈夫?」



あれからたった三時間半しか経っていない。朝の七時にまたYシャツに腕を通す才川くんはさすがに眠そうだった。



「うん、平気」



欠伸を噛み殺しながら返事をされてもちょっと不安だ。だからって〝休めばいいよ〟なんて言えないし。


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