才川夫妻の恋愛事情


「っ」



耳の中に舌を入れられてぞくっとする。



「――かわいい、花村。好き」



どうして花村、と思う間もなく息を含んだ囁きは続く。

舐めて、わざとチュッと音をたてながら。酔っ払ったように、少し舌足らずな甘い声で。



「好き、大好き。……花村。食べたい」

「っ、あ……」



声が漏れそうになるのを自分の手で塞ぐ。もう起きてることなんてバレてる。

それでも終わらなかった。



「……愛してるよ、花村。……めちゃくちゃにしたい」

「んんっ……」



体の芯に火をつけるような熱っぽい声に体は疼かされた。

言葉はどんどん過激になって、もう、



ギブアップ!



そう叫ぼうとしたとき、最後に囁かれた。





〝       〟









「ッ……! 酔ったフリしないでっ‼」



飛び起きてぼすっと枕を彼に投げつけた。
才川くんはそれを簡単に受け止めて飄々とした顔で言う。



「バレたか」



こんな健全な時間に帰ってきておいて酔っているハズがない。
彼はザルだ。結婚して六年。彼が泥酔しているところは一度も見たことがない。

才川くんはほんのりとお酒の匂いをさせながら、ベッドを降りたってネクタイを解く。

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