才川夫妻の恋愛事情
初対面でお互いの志望動機を話すのも、就職活動におけるお決まりのパターンだった。答えなんてだいたいいくつかの種類しかない。〝子どもの頃に見たCMが大好きで、それを制作したのがこの会社だと知って〟だとか、〝OB訪問で話を聴いた先輩に影響されて〟だとか。自分にとっては特別な理由でも、たくさんの中で並べられると同じカテゴリに分類されて似たり寄ったりだと思われてしまう。
そんな中で。いまいちペースの掴めない彼女がどうしてこの業界に入りたいと思っているのかには、少し興味が出てきていた。
何食わぬ顔で彼女の話の続きを待つ。
「社会に出たら、自立してしっかり生きていかなきゃいけないじゃないですか」
「……うん?」
「だからお給料が良くて、福利厚生の充実した会社がいいなと思って」
「……」
「あと私どうにも飽きっぽいところがあるので、毎日同じ内容の仕事をコツコツやるのは向いてないと思うんですよね~」
「……」
それは今までにない回答ではあったが、あまりに即物的でコメントに困った。
なんだこいつ。夢見がちそうな外見とは裏腹に、超現実主義者じゃないか……。
「あ、才川くん今ヒいてるでしょ」
「……」
心を読むのはやめてほしい。可笑しそうに笑う彼女は、決して人の気持ちに疎いわけではなかった。自分の言葉を相手がどんな風に感じ取るのか割と正確に捉えている。その上でとてもマイペースだった。
そのことに気付くとまた関心が膨れ上がって。
ドン引きだ、とは言わずに質問をした。