才川夫妻の恋愛事情










告白された後のことはあまりよく覚えていない。

予想外の展開に頭の奥が熱を持って、余裕がなくて。彼女の手を引いて家にあげると、二人ともリクルートスーツを着たままベッドに倒れこんだ。好きだと言ってきたみつきもさすがにここまでは想像がつかなかったようで、家まで手を引かれている間は狼狽えていたし、ベッドに押し倒したときもひどく動揺して〝待った〟をかけていた。

でも髪を解いて口を口で塞ぐと大人しくなった。





これは明らかによくないパターン。

就活中に知り合った女と寝てしまうなんて、どう考えたって。





同じような話を〝就活ラブだ〟なんて言ってゼミの奴が話しているのを聞いたときは、馬鹿だと思った。目的を見失っているし、就活でなんてどちらかが不採用になった瞬間すぐに気まずくなって終わるに決まっている。

確かにそう思っていたのに、今一体自分が何をしているのか。泣きながらしがみついてくるみつきの上でそんなことを考える一方で、仕方がない、と思っている自分もいた。

花のように微笑んで〝好きかもしれない〟と言われたときの衝動は。

こんなに強烈に何かを欲しいとか、自分のものにしたいとか思ったのは初めてだった。




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