才川夫妻の恋愛事情
散々抱いて、啼かせて。翌朝目覚めて腕の中の彼女と目が合ったとき、やってきたのは盛大な後悔だった。
――やらかした。激しい自己嫌悪に襲われる。何が〝仕方がない〟だ。俺は犬か? 自分の理性があまりにクズだと知って絶望する。告白されて、なんですぐ抱こうと思った。他に何かあっただろ。断らないにしても、もっと他に穏やかな関係の始め方が何か……。
輪をかけてバツが悪いことに、彼女は処女だった。面倒なことこの上ない。
「……才川くん」
「……おはよ」
気恥ずかしそうに名字を呼ばれて、どうしたものかと逡巡する。この状況を何と説明しようか。もし責任取ってくださいなんて言われたら何て言い訳しようか。情けないことに、そんなことばかりを考えていた。
すると彼女は、俺の胸をそろりと押し離して腕の中を出て行った。機嫌良さそうに口元を笑わせながら、上体を起き上がらせて掛布団で胸元を隠しながら、ベッドの下に落ちている下着やシャツを片手で拾おうとする。
「……」
不思議な気持ちでそれを見ていた。どういうつもりなんだろう。何を思って、そんなに笑って。