才川夫妻の恋愛事情
「〝かわいい子には旅をさせよ〟的なことなんでしょうね。昔から良くも悪くも放任主義だったし、極端なのは慣れっこです。〝大学卒業したら縁を切る〟っていうのも高校生の頃から言われてきたことなんで、心積もりはできてたんですけど……」
出会ったときからみつきは現実主義者だった。実利的だし、家事のスキルといい金銭感覚といい、やたらと生活能力が高い。彼女の考え方はどうやら育った家庭環境に根付いているらしい。どうりでやけに強かで、物分かりがいいわけだ。そういう意味では、みつきの両親は方針通り娘を教育したと言えるんだろう。いや、でも。だけど。それでどうして。
「……なんで、それで内定を辞退するってことになるんだ?」
「あ、ほんとだ答えられてないですね。えーっと……。縁を切られる心積もりは昔からできてて、ただ、その後どうするかってことは深く考えられてなかったんです。最近やっと考えだしたくらいで。それで、考えれば考えるほど……」
「……」
「私のこれからって、自由なんだなぁと思って」
「……」
……頭が痛かった。