才川夫妻の恋愛事情
そもそもこんな結婚、許してもらえるだろうか。学生結婚な上に出会って間もない。みつきは俺とのことをどこまで正直に両親に話したのか。まさか〝去年の十月に出会った〟なんてバカ正直に話してないだろうな……いや、話しかねない。
考えれば考えるほど結婚を了承してもらえるとは思えなかった。いっそ認めてもらえないほうが、都合がいいかもしれない、なんて思ったりして。
ただ、出会って間もないしとか認めてもらえないほうがとか、色々と悩んだ割には。
「みつきさんのことを心から大切に思っています。結婚させてください」
何十回と考え直して結局シンプルになったその言葉は、すとんと自分の中に落ちてきた。
みつきの両親は本当に普通の人だった。恰幅が良く、寡黙だけれど目元の優しい父親と、小柄で品よく、慎ましく笑うみつきに似た母親。どれだけ厳しそうな人たちに出迎えられるんだろうと構えていたから、最初に挨拶をしたときは拍子抜けした。ただただ善良そうな二人を前に、〝大学を卒業したら絶縁〟はみつきの作り話だったんじゃないか? なんて思ってしまったほどに。
でも俺が頭を下げた後に頭上から降ってきた父親の言葉で、それは本当の話なのだと悟った。
「好きにしなさい」
みつきの父親は、穏やかでありながらも威厳のある声で言う。