才川夫妻の恋愛事情
「去年の会社説明会でこの子と会ったのよね? 一体どこが良くて付き合おうと思ったのかな~ってずっと気になってたのよー」
やっぱりバラしてた……。
みつきを見ると、バツが悪そうでもなくてむしろ〝私も気になる!〟くらいに興味津々でこちらを見ていた。おい。
次に会うときは説教だと心に決めて、それを笑顔の下に隠し彼女の母親に向き直る。
「みつきさんがとても真っ直ぐに告白してきてくれたので。それにほだされて、ですかね」
「あらやだ、みつきから告白したの?」
母親の問いかけにみつきは、照れながらも笑って〝うん〟と頷いた。
「そうなの? ……でも付き合おうって言ったのは才川くんからなのよね?」
「え」
「朝、ベッドの中で付き合おうってなったんでしょ? やだすごいロマンチックー♡と思って聴いていたんだけど……」
違うの? と彼女の母親は、みつきにそっくりな大きな目をパチパチさせて訊いてきた。
「……はは」
俺は誤魔化すように笑いながら、生きた心地がしなかった。え? という顔をしたみつきの父親からばっと顔をそらして、もう二度とそちらを向くことができない。
みつきを見ると前髪を片手で押さえて真っ赤になって黙り込んでいた。
……お前が喋ったんだろうが!
次に会う時は絶対に泣かせてやると心に決めて、なんとか話題を逸らそうと奮闘した。