才川夫妻の恋愛事情
そして、翌年の三月十八日。大学の卒業式の日。たまたま俺の通う大学も、みつきの通う大学も卒業式の日程が被った。
よくよく考えればこの日に急いで籍を入れる必要はなかったし、三月末まで二人の身分は学生だった。けれど卒業式を境に、彼女は住む家を追い出されるという話だったので。俺たちはそれぞれゼミの謝恩会の後合流して、市役所の夜間窓口に行った。
手続き自体はあっさりしたもので。
たった一枚の婚姻届で俺たちは夫婦になった。あとは戸籍謄本を準備したり証人の署名捺印をもらう手間はあったけれど。
「……意外とあっさりしてましたね?」
「そういうもんだろ」
「結構緊張してたんだけどなぁ……。なかなか寝付けなかったんですよ昨日。袴の着付けで早起きしなきゃいけなかったのに」
お陰で寝不足です、なんて言って口を尖らせているみつきは、ついさっきまでの花村みつきと何も違わないはずなのに。
妙に可笑しくて、少し前を歩く彼女に声をかけた。