才川夫妻の恋愛事情



松原さんの化粧は深夜でもまったく崩れていなかった。それでも、隣から見る横顔にはうっすらとクマが見える。超人的に仕事ができても人間。私のトレーナーは、すごいけど人間。それを忘れないようにサポートしなければと思う。



「今日の結果、いつ連絡きますかねー……」

「うーん……前は当日だったからなぁ。どうせもう決まってんでしょー? と思っちゃうわよね……。返事を伸ばす理由は……タレントが気に入らないとか? それならすぐ希望投げ返してくれる気もするしなー」

「もやもやしますね……」

「そうね。でもまぁそんなものよ。それにやることはやったから、結果が出るのが楽しみでもあるわね。返事は早く欲しいところだけど、こういう宙ぶらりんそこまで悪い気はしないかな」

「ははぁ……さすがです」



素直に感嘆しながら、その言葉を自分の状況に当てはめて考える。結果が出ないことは、もやもやする。そして私はやることはやったのかと言われると……無かったことにしようかなんて考えていて。だけど相手が、もう決まった返事を用意していそうな場合、私はどうすれば?



「……松原さん全然関係ない話してもいいですか?」

「その話面白い? 面白いならどうぞ」

「弟子の話くらい面白くなくても聴いてください」

「あら、言うようになったじゃない。いいわよ。何?」



私はトレーナーに答えを求めることにした。



「……松原さんは、好きになった相手に高確率で恋人か奥さんか、パートナーがいそうな場合、相手に好きだって伝えますか?」



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