才川夫妻の恋愛事情
またせり上がってくる緊張にそんなことを思ったが、私の今日の目的から考えると本当はこのほうが合っていた。人の耳を気にせずゆっくりと話せる場所。……ただばっちりすぎて尻込みする。そしてこういう場所を選ぶあたり、才川さんは私の目的をきっちり把握しているということ。
向かい合って座ると、私はテーブルの隅に立てかけてあったメニューに手を伸ばして才川さんのほうに向けて置こうとする。それを、取り上げるように彼の手に奪われた。
「……え?」
奪った才川さんは、テーブルに肘をついた両手にメニューを重ねて持って、にこにこと笑う。
「そんなにガチガチじゃ料理の味もわかんないでしょ」
「は……」
「何か言いたいことがあるなら、先にしない? ここの料理は美味しく食べてほしい」
「っ……!」
駄目だ全部バレてる。一度告白はしているのだから、当たり前と言えば当たり前だった。ただこんな風に仕掛けてこられるとは思わなくて、不意を突かれて心臓が早鐘を打ち始める。
速攻でケリをつける気じゃないですか……。